読書メモ断片:劣化国家
あとで整理できるといいが、、、以下、キーワードと思いつきを並べただけ。
途上国の超法規的資本所有とその効率的運用が不能であること<エルナンド・デ・ソトの「資本の謎」
包括的制度と収奪的制度
レントシーキングなエリート達
西洋の成功は法の支配、というか王の恣意的収奪からの自由
1688年の名誉革命が1689年の権利章典inマグナカルタを呼んだという意味で分水嶺か。で、その下で議会が積極的な立法と改革をしたのが、戦争まで利益を生む体質になった
名誉革命>権利章典>農業改良>帝国拡大>産業革命 の、歩みは偶然もあるにせよ、流れは合理的。
商人やイノベーターを解放する制度がフロンティアを開拓する可能性を生み出した。
イスラムでは、銀行という形態は生まれない制度だった。
では、制度がすべて、という見方で、発展ではなく衰退の道を眺めてみるとどうなるか?
が、本書の中身(途上国のキャッチアップは制度的キラーアプリをダウンロードして実行しただけ、という見方)
で、今は本当に衰退しているのか、その先の「定常状態」はどうなるのか?
法の支配の劣化
法律家による支配、の懸念
繁栄したイギリス社会は、貯蓄、投資、イノベーションを優遇した。市民は悪徳だったが、、
ホイッグ党は国政としては農業改良、帝国拡大を押し進めたが、金融組織(中央銀行>貨幣流通と株式市場)も活動を許した。(それはオランダからダウンロードしたのだが、実行できる素地は必要だった)
産業革命には労働コストの高騰と安価な石炭エネルギーという背景もあった。エネルギーを利用できる冶金技術があったのは幸運だった。
そして、政府の債務が膨らむ一方で、レントによる資本調達コストは下がった。これで戦費も調達できた。資本家の貯蓄が証券として流通させてそれを利用できることでレバレッジも効いていた。政府の債務は、膨張した帝国が資産として釣り合った。その後は技術革新の優位性で債務弁済が可能だった。
独裁政治と民主政治のトレードオフ
後者は酷い間違いを救う多様性の可能性を秘めている。
公的債務の膨張
good news:これがあるおかげで、未来に借金ができる。さらに、まだ積み立てていない社会補償費というこれから発現する債務もある。実はこれがでかくて、アメリカでも200兆ドルもの「支払えそうにない債務」があり、これを今後の世代は背負って行く。
社会契約というのは、政府と民ではなくて、世代間の協調である。今は相手の同意も得ずにものすごいツケ回しをしている。これが可能な制度であることが問題。いずれ先進国はこの債務で沈む。<エドマンド・バーグの言
世代間の社会契約をいかにして回復するかが成熟した民主主義社会の最大の課題だ。
しかし障害がある。
- 若年層の無理解
- 官僚と保険受給者という巨大なロビー活動
- 高齢化
これを救うにはover rule: 憲法が必要だろう。あらたな権利章典である。
これが持続的繁栄を保証する、のか?free riderを完全には除去できないのがゲーム理論
景気対策として公的負債の増加をみとめてしまった現在、かなり難しい。
ありうる施策、というかシナリオ
- 政府の会計の透明性と世代間のバランスシートの開示
- 無惨な経済的絶滅によって、若い国に座を譲る
- 低空飛行を延々続ける(日本のように)
市場の制度は劣化しているか?
規制緩和は悪ではない。
危機は市場の流動性(自由さ)があれば回避できる可能性は高まる、しかし危機は自由の結果ではない。外敵要因の対応失敗である。
まずい規制とは? 市場に正しく理解されないルール。市場参加者を理解していないルール
なぜまずいか?複雑すぎる<作成者、施行者の利益のために
規制の側に市場モデルができていない!
わかっていないものに複雑なルールを適用しようとするのは絶対にうまくいかない。
タレブの対脆弱性
バジョットのロンバード街
p.89明文化し得ないルール
法の支配の及ぶ範囲を国として、高効率でグローバルなインフォーマル国家へと浸み出す。それがグローバル企業だ。
市民のチカラ
しかしこれも劣化している
トクヴィル p.138 合衆国では、公安や商工業、道徳、宗教といった目的のために人々が団結する。個人がチカラを合わせて自由に活動することで達成できない人間の意思は何も無いのだ。
そんなソーシャルキャピタルの減退、、ネットの上のソーシャルネットワークは大事なものが失われた囲い込みの結果にすぎない。(ロバートパットナムの「孤独なボウリングー米国コミュニティの崩壊と再生」
ボランティアも衰退:人口のわずか8%が全ボランティア時間のほぼ半分を占めている。
慈善寄付も減っている
市民社会の空洞化はSNSに食われたということではない。「統治者によってコロシアムに群がる愚民」になったのだ。
福祉社会という名目の市民の幼児化
福祉は必要無い、わけではない、しかし「与えられる」ものではない「お互い様」なのだ。
p.150 人々が互いに働きかけることではじめて、感情と思想は自らを刷新し、心は広がり、人間の精神は発展するのだ。ートクヴィル
市民層が貧困に飲み込まれてしまったのが原因だとすれば、鶏卵だな。
貧しくとも,意思はある。
ならば、なにから手をつけるか。次世代の市民を作ること、教育からだ
公立学校の民営化ーーなるほどなーー、貧しかったら他人の支援を求めよ、と。
市場が決めた高品質の物を、ほしがる人に与えられる。
公の教育が善だったのは、ある段階まで。でも、エリートが平均値へ下がることは望ましくない。
機会が平等であることと競争は矛盾しない。
エリートスクール、 自由な教育をするフリースクール トビー・ヤング
いろいろあっていい、というところが重要なのだろう。
悪いと思ったら他がある、というところが重要なのだ。
批判は当然ある: http://wind.ap.teacup.com/people/6536.html
社会に参加することは市民に良い影響を与え、なおかつ政府のコストを下げる
貧困を自分たちの問題と考えられるだけで、解決の糸口はできる。
そうでなくては格差維持も悪平等も支配者のいいなりである。というか福祉官僚の糊口をしのぐのみ。
要するに
今の西洋社会の危機;制度の疲労
- ・金融政策の複雑化:脆弱化
- ・法の支配が法律家の支配
- ・市民社会の衰退:福祉という名前の国家による介入
クリーンアップの時