「宇宙をプログラムする宇宙」読了

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

esoteric languages - kgbu?で、思いつきとして書いていたことがかなりそのまんま出てくるのでギョっとしたが、Santa Fe研究所の論文集とか複雑系とかチャイティンとかルディ・ラッカーの思考の道具箱―数学的リアリティの五つのレベルとか、この本の筆者のセス・ロイド(Seth Lloyd)の仕事の周辺をずいぶん脳みそにインプットしてたのだから、当然か。
自分は宇宙の成り立ちはコンピュータの演算である、というアイデアは自然と受け入れていたのだけど、そのアーキテクチャとしてセル・オートマトンというものに惹かれ続けてきた。しかし、今度という今度は、すくなくとも現存の物理系(量子力学系)の効率的な実行という面では量子コンピューティングを正面から受け入れないといけないなと感じた。(追記:cell automataはesotericに過ぎるかもしれない、ということ)
まぁ、こんなことは物理やってる人には釈迦になんとかなので、流してください。

ランダウアの仕事を読みたい

チャイティンランダウア、ベネットのいたころIBMのラボって、どんな感じだったのだろう。ランダウアの研究は、情報物理学の基礎になっていて、いろんなところで言及されるのだが(たとえば、ビット:情報を消去すると、熱が発生する、とかいう言い回し)、うまくまとまった文献を探して読みたい。

こんなのを見つけた

「第三回 物理学の基礎における新しい方向性」国際会議報告
この中で、

John Norton (ピッツバーグ大)は「安逸をむさぼる者たち----ランダウアの原理とマックスウェルの悪魔の帰還」と題する発表(中略)発表者はマックスウェルの悪魔を作る具体的なレシピは発見しておらず、そういう試みは結局は失敗すると考えているが、ランダウアの原理のようなやり方で原理的に悪魔の可能性を消去することもできない、というのが結論であった。

なーんてなことが最近(2004年)でも議論されているらしい。

ところで、キモの話の焦点をメモし忘れていた

サル(ランダムなゆらぎ)が宇宙を作った。という話。
正確には、ランダムな揺らぎをコンピュータに掛けて実行結果を見る場合、シンプルなものなら意味をもったパターンが入力される可能性がある。ということ。つまり、現在ある宇宙の構造は、ランダムな選択の集大成というよりは、初期宇宙で量子論的ゆらぎによって「偶然に」入力されたシンプルかつ(宇宙というコンピュータにとって)有意なパターンが延々と実行された結果のエコーのようなものである確率が高いという話。